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BABA labの抱っこふとん

「首のすわらない赤ちゃんの抱っこが怖い!」を解決した、疲れない・家族でつかえる、優しいふとん。


「抱っこふとん」の誕生秘話

 BABAラボにとって初めてとなる孫育てグッズは、私(BABAラボ代表・桑原静)自身のいたって個人的で、とっても切実な思いから誕生しました。

 2009年秋、私は2945グラムの女の子を産みました。夫婦双方の親にとっても待望の「初孫」の誕生です。出産後できるだけ早く働こうと決めていたため、じじばばには事前に育児協力を依頼し、生まれる前から育児グッズを探しては、「これがいい」「あれがいい」と揃えていました。

 さて、生まれてきた娘には「ある特徴」がありました。それは、とにかく「寝ない子」だったのです。事前に購入していたベビーベットや、バウンサーで寝るのは稀なこと。寝たかなと思ってベッドにおろすとギャン泣きが続き、スヤスヤと眠ったままでいられるのは抱っこして体がぴったりとくっついた状態だけ。これには私たち夫婦も、じじばばも困り果てました。特にじじばばたちにとって、首の座っていない娘を抱っこすることは「絶対に落とさないようにしないと!」と必要以上に緊張して力が入ってしまうもの。長時間ゆっくり揺らしながらの体勢が続き、赤ちゃんが眠りに入るころにはもうヘトヘトです。

 はたして、娘がグッスリ眠る良い方法はないものか…。家族総出でいろいろと調べていたところ、母が(ばば)が『トッポンチーノ』と呼ばれるものがあるらしいとどこからか聞いてきました。それはモンテッソーリ教育の中で使われる赤ちゃん用の抱っこふとんのことだと判明し、早速、手作り作業が大好きな祖母・絹子おばあちゃんに試作してもらうことにしました。するとどうでしょう。その抱っこふとんを使うと、見事に娘はスヤスヤと寝るようになり、そのまま床やベッドにおろしても起きることなく眠り続けるではありませんか。

 両方のじじばばたちは大喜び。特にじじたちは「この抱っこふとんがないともう娘の寝かしつけができない!」とまで言うようになりました。絹子おばあちゃんにいたっては、もともと年齢的に腕力が落ちていましたので、「これでようやくひ孫を抱っこできるわ」と本当に嬉しそうでした。必要に迫られて誕生した抱っこふとん。このおかげで、我が娘とそれを支える家族の生活は格段に楽になったのです。

 

他の子も使ってみたらどうだろう?

 実はこの後、娘の抱っこふとんは何度も改良することになりました。まずは「洗い替え」が必要だと、同じ形のものをもうひとつ製作。さらに、頭をのせる部分にはよだれが垂れるので、別のタオルにボタンをつけたものを作って洗い替えできるようにしたり、本体のサイドに「ガーゼ入れのぽっけ」を作ったり、抱っこふとんの「持ち運び用のケース」も作ってみました。こんなふうに改良の末に改良を加えた抱っこふとんは、娘にとってはまさに「自分専用の居場所」となったようで、抱っこふとんの上ならベッドで寝るのも大丈夫になり、チャイルドシートやベビーカーなどへの移動もスムーズに行えるようになりました。

 ここで、ある疑問がふと頭をよぎりました。「うちの娘にはとてもいいグッズだけど、他の子にはどうなのだろう?」。そんな時、ちょうど4人目の子どもが生まれる親戚がいたので、抱っこふとんを送ってみると、すぐさま「一人目から使いたかった!」とのリアクション。ベテランとも言えるお母さんからのお墨付きに自信を得てからは、「こっちで赤ちゃんが生まれた」「あっちでこれから生まれる」と聞けば、抱っこふとんを送っていろいろな家族にお試しで使ってもらったのです。

 こうして、私が想像していた以上に周囲の人たちから「便利だね」という感想をもらったことが、「これをBABAラボで孫育児グッズとして作ってみよう!」との決断につながりました。何かと大変な育児ですが、お母さんもお父さんも、じじばばも、赤ちゃんを育てるすべての家族が、抱っこすること自体を楽しいと感じられるようにと心から思ったのでした。

 

みんなのアイデアをカタチにする

 本格的な製品化への試みは、2012年からスタート。自分の娘や身内ではなく、他人様に使ってもらうためにまず始めに取り組まなければならなかったのは「デザイン」の改善でした。実用性だけでなく、毎日の慌ただしい育児の中で、進んで使いたくなるような愛着の湧くものです。

 デザインは、BABAラボ創業時からのメンバーでもあるグラフィックデザイナーの長田裕子さんに依頼。今まで作ってきた抱っこふとんの良かった所を伝えながら、いろいろなアイデアを考えてもらいました。最終的には、「くまの耳」が付いた抱っこふとんのデザインが完成。赤ちゃんがスヤスヤ眠るのを包み込んでくれるイメージから、動物の形がいいのではないかというアイデアが出て、くまの耳をつけることになりました。

 デザインのコアアイデアが決まってからは、今度はひたすら「機能性の向上」に努めました。もっとも大事なパートナーだったのは、たくさんの「じじばば」たち。実は、開発のためにリサーチしていく中で、昔の日本では座布団に赤ちゃんを乗せてそのまま抱っこしていたということを知り、新しいものを作るというよりも、昔からある知恵を今の育児に活用した製品にしたいと思ったからです。

 知恵や経験を求められたじじばばたちは、プロ顔負けに、遠慮なく意見を言ってくれます。「横幅は広い方がいい」「ふとんの厚みも身体の感触が伝わるくらいで」などとさまざまな意見が飛び出し、それらを少しずつ取り入れながら改良を重ねていきました。最終的に製品化するにあたっては、布の断ち方や、ふとん制作時には必ず行うという「綿打ち(綿がふとんの中で動かないようにとめる作業)」を取り入れるなど、たくさんの制作メンバーと試行錯誤の末にようやく製品化にまで辿り着いたのです。そうして、2012年12月、いよいよ販売開始となりました。

 

研究機関と「データ検証」を実施してみた!

 さて、念願の販売がスタートしてみると、購入者アンケートによって日々いろいろな感想が届くようになりました。その中で、想定内でもあり、でもやはり嬉しかったことは、「抱っこふとんを使うと実際に赤ちゃんの抱っこがラクになる」という感想が多かったことです。しかし、油断は禁物。アンケート結果はあくまで「個人の感覚」でしかありません。どうにかして、どこかの研究機関で抱っこふとんの検証データがとれないものかと、大胆にも模索し始めました。

 そこで、ほ乳瓶の開発でもお世話になっていた(公)さいたま市産業創造財団の齋藤昭彦さんに問い合わせてみたところ、目白大学保健医療学部理学療法学科の工藤教授を紹介していただきました。実験の方法は、抱っこふとんを使った時と、使わないで抱っこした時の上げ下ろしに使う筋肉への負荷のデータを収集することです。さて、結果はいかに…。

 残念ながら、収集されたデータでは大きな結果の差は出ませんでした。実験に参加した学生からも「抱っこふとんの方が軽かった」「ラクになった」という意見をもらったものの、主観的な感想を客観的な数字に置き換えるということは、思っていた以上に難しいものでした。しかし、この「科学的にちゃんと検証してみる」という工程は、お客さまに納得して商品を使っていただくためにも、BABAラボの商品開発時には必ず実施するほど大事な制作プロセスとなっています。

 いずれにしても、私たちは転んでもタダでは起きません。再び、さいたま市産業創造財団のご縁で、今度は同大学の人間学部子ども学科の荒牧美佐子准教授・博士を紹介してもらい、「赤ちゃんの正しい抱っこの仕方」をレクチャーしていただきました。なるほど、赤ちゃんを抱っこする時は、股のところに腕を入れて抱っこすると重さが軽減されるとのこと。だから、抱っこふとんの裾部分に腕が入りやすいように「窪み」をつけてみては? そんな素敵なヒントをいただいたのです。もちろん、形状はすぐに変更をかけて、今ではお尻にあたるところに窪みがあるデザインとなっています。

 

職人集団として、こだわって、こだわり抜く

 抱っこふとんは、型紙にあわせて生地を裁断するところから、本体カバーや耳、タグなどの縫製、中ふとんの制作、本体カバーの仕上げのアイロンかけまで、すべての工程を「手作業」で行っています。だからこそ、購入者アンケートで嬉しいのは「縫製技術がすごい!とても丁寧に作っているのがわかりました」という声です。

 制作メンバーには、手芸、ミシンの得意なばばたちや育児中のお母さんが集まっています。その職人集団のメンバーたちでさえも、ひときわ難しいと答えるのが「中ふとんの形状(カーブ)にあわせて本体カバーを縫うこと」。丸みをおびた形状にあわせてミシンをかけていくのは、熟練したミシン技術が必要になります。「カーブは左右対称になっているか」「各パーツの縫い合わせがずれていないか」「タグが付いている部分の縫い目は平行か」「中ふとんを入れるため1mmでもサイズがずれないこと」などをチェック項目に入れ、本体カバーを制作しています。また、本体カバーについているかわいい耳のカーブの縫い目は、すべて1mmに揃うように統一しています。

 そうやって「ひと工程」が終わるごとに、本体カバーにアイロンをかけていきます。なぜなら、縫い目に合わせてアイロンをかけておくと、仕上がりがきれいなのはもちろん、次のミシン作業もスムーズになるからです。そして、本体カバーが縫い終わると仕上げのアイロンかけを行い、余分な糸がでていないか、ミシンの縫い目はきれいにしあがっているかをチェックしつつ、少し力を入れながら、しわがきれいに伸びるようかけていきます。

 丁寧さが必要とされるあらゆる制作工程の中でも、「綿入れ」と「綿打ち」は、赤ちゃんがぐっすり眠るためにとても重要な作業。決められたグラム数の綿をまんべんなく入れ、全体に均一に平らに入れます。布団の頭の部分と足の部分に均等に綿を入れるのには、ちょっとしたコツが必要です。また、中ふとんには6か所糸で止める箇所があり、糸がほどけたり、堅すぎたりしないよう、力のかけ方に注意しながら作業を行い、中ふとんの口を閉める時は特に気を遣います。

 このように「赤ちゃんが使うもの」だからこそ、制作メンバーはこだわりにこだわっています。形状や縫い目、ふとんの厚みなどは、ひとつずつ検品担当者が厳しくチェックを行い、やり直しになることもしばしば。検針機を使った検針や、製品の検査(ホルマリン検査)なども欠かさず行っています。抱っこふとんを使う赤ちゃんが元気に健やかに育ちますように、使ってくれる赤ちゃんやご家族のことを想いながら、制作メンバーは、日々ミシンをかけ、手を動かし続けているのです。

 

終わりなきカイゼンの日々

 2012年の発売から、今までたくさんのお客様にご注文いただきました。北は北海道から南は沖縄、海外でお使いの方も増えています。購入理由も、ご自身に孫が生まれて使うため、赤ちゃんの生まれた娘息子夫婦が使うため、抱っこふとんを使った方が友人、知人、親戚にプレゼント用になどさまざまです。こんなふうに、たくさんの人の手に渡れば渡るほど、私たちにとってはいつも発見があります。だからこそ、製品の改良が終わることはありません。

 たとえば、抱っこふとんで使われている素材。ふとんに使っていた綿は当初は真綿でしたが、全体の重さをより考慮して、今では千葉県の綿工場から直接仕入れた軽い綿に変えています。ふとんのカバー生地も、汗などの吸収を考え、綿からガーゼ生地、そしてダブルガーゼとなりました。

 生地の柄も、「ブルー地にピンクの水玉模様」と「ピンク地にブルーの水玉模様」から、「ベージュ地にホワイトの水玉模様」が追加され、期間限定で「カフェオレ色」や「花柄」も登場しています(2017年7月現在)。

 ふとんの形状に関しても、抱っこする手が添えやすいように手を添える部分に緩やかなカーブを施し、肉球の刺繡も入るようになりました。また、猫好きな方からのリクエストによって、「猫耳のバージョン」もできました。最近では、「オーガニックコットンを使った抱っこふとんが欲しい!」というユーザーの声をもとに、縫い糸から生地、綿のすべてをオーガニック製品で制作した「オーガニックコットン版の抱っこふとん」も誕生しました。

 

 今後は、抱っこふとんの「制作キット」を販売していく予定です。キットの内容は、最初から最後までご自身で作る「自分で作るタイプ」と、布だけ送ってもらえればBABAラボスタッフが完成させる「おまかせタイプ」。また、制作途中で挫折してしまった方向けに途中からBABAラボの制作スタッフが完成まで作ってくれる「制作メンバーのフォロータイプ」などを用意したいと考えています。どのタイプも個別フォローは随時できるようにする予定です。

 抱っこふとんは、本当にたくさんの方々の関わりによって、ようやく現在の形となりました。ひとつの抱っこふとんを作り上げるにも、何人ものばばたちやお母さんたちの手がかかっています。これからも、抱っこふとんを作る人と使う人、抱っこする人もされる赤ちゃんも、この製品を通じて「人のつながり」を感じられる、そんなものづくりをしていきたいと思っています。

「抱っこふとん」ご購入はこちら


執筆:BABAラボ代表 桑原静


Special thanks

公益財団法人さいたま市産業創造財団の齋藤昭彦さん

目白大学 保健医療学部 理学療法学科 工藤祐仁教授

目白大学 人間学部 子ども学科 荒牧 美佐子准教授・博士