【私たちの見聞録】イスラエル視察編 海外からの見学者を迎えて感じたこと

2026年7月、イスラエルから約40名の“Future Time(未来時間)イスラエル視察団”がBABA labさいたま工房を訪れました。今回訪れたのは、高齢社会政策に携わる政府・自治体関係者、医療・福祉の専門家などの皆さんで、日本の「地域包括ケア」「介護予防」「コミュニティづくり」などを学ぶため、約1週間にわたって日本各地を視察する中で、BABA labさいたま工房にも足を運んでくれました。

前回のアメリカの大学からの見学に続き、海外からの視察が増えています。回を重ねる中で、私たち受け入れる側にも少しずつ変化が生まれています。

「きちんと教える」から「一緒に楽しむ」へ

今回も、指編みのシュシュづくりを通した交流を行いました。これまでの経験から、ワークショップの進め方も少しずつ変わってきました。以前は『きちんと教えなければ』『時間内に作り上げてもらわないと』という気持ちが強かったのですが、回数を重ねるうちに『楽しんでもらおう』『私たちも楽しもう』になりました。

今回は、これまでの見学者(学生が多かった)よりシニアスタッフと年代が近かったこともあり、お互いに理解しようと歩み寄る様子が見られました。作り方のレシピを渡したり、最初に英語で細かな手順を説明したりすることを、あえてやめたのも、これまでの経験から生まれた工夫です。分からないことがあれば、身振り手振りで伝えるようにしました。作品をきれいに完成させることが目的ではなく、一緒にものづくりをすることで生まれるコミュニケーションを大切にしようと考えたのです。

「何をつくっているか」だけでなく、「誰がつくっているか」

工房では、普段スタッフがものづくりをしている様子も見学してもらいました。スタッフには普段から製造を担当している布ぞうりや抱っこふとんを製作してもらい、通訳を介して、これがどういう作業なのかを説明してもらいました。

事前にヘブライ語で「ありがとう」を意味する言葉が「トダ」ということをスタッフで共有していたので、見学者が「細かな作業ができてすごいですね」「(スタッフの年齢を尋ねた後に)お若いですね」と言われたときに「トダ」と返すことができたそうです。短い言葉ですが、事前にその国の短い挨拶はできるようになっておこうと気づきました。

作業を見学するほかに、スタッフが製作したハンドメイド品のお買い物タイムも設けました。柿渋で染めた手ぬぐいで作ったあずま袋やほおずき型のお手玉がよく売れました。お手玉の遊び方を実演したのもよかったのかもしれません。

「商品を見てもらうだけでなく、つくっている本人が自己紹介をしたり、自分の作品を紹介したりできると、もっと私たちのことを知ってもらえるかもしれない」普段、私たちにとっては当たり前になっている工房の風景ですが、海外からの見学者を迎えたことで、商品だけではなく、そこで働いている一人ひとりのことを伝えることも大切なのだとわかりました。

次に海外からお客さまを迎えるときには、「この人はこんなものをつくっています」と事前に紹介したり、シニアスタッフ自身が自分の言葉で話したりするなど、もっと直接交流できる方法を考えてみたいと思います。

見学は一日がかりだったので、お昼ご飯は、BABA labさいたま工房のお隣にあるレンタルスペース『ほぼのら』でランチやおやつを提供している「ろみさんち」の長谷川さんにお弁当づくりをお願いしました。視察団からの要望は、「ベジタリアンランチ」。たまごや乳製品は使えるのですが、和食に欠かせない「かつお節」や「めんつゆ」が使えないと言われました。

ベジタリアン食を50食以上(スタッフのお弁当も含む)というのは、長谷川さんにとっても初めての経験で、しかも暑い日だったので衛生面でもより一層気を使ったと後日話してくれました。さらに、ランチの内容を英語で説明できるよう事前に練習してきた長谷川さんの姿からも、「交流」する大切さが表れていました。視察団からも「シェフ美味しかったよ!」という感想がありました。

日本の介護サービスはどう見える?

午後はグループに分かれ、地域のデイサービスを見学しました。視察団にとって日本のデイサービスの仕組みは関心が高かったようで、たくさんの質問が出ました。

「家族が介護するのではないの?」
「送迎もサービスに含まれているの?」
「食事は?」
「どうすればこのサービスを利用できるの?」

利用者の様子だけでなく、施設の設備や掲示物、スタッフの働き方まで、細かなところにも興味を持って見学していました。BABA labのスタッフにとっても、海外の人から投げかけられる質問は、日本の介護や福祉の仕組みを改めて考えるきっかけになりました。

手芸がつなぐ、小さな国際交流

BABA labでの見学では、こんな場面もありました。イスラエルから来た男性が被っていた小さな帽子を見せてもらうと、それは娘さんが編んだものだと教えてくれました。国が違っても、誰かのために手を動かしてものをつくることは同じです。「ほかの国の手芸事情を教えてもらうのも楽しい。BABA labのシニアスタッフも、もっと海外のお客さまといろいろなことをおしゃべりできたら楽しんでもらえるのでは?」そんな声もスタッフから聞かれました。

ものづくりを通して生まれる交流

指編みシュシュづくりでは、スタッフ自身にも大きな変化がありました。以前は「きれいに完成させてもらうこと」が大切だと思っていたそうです。もちろん完成することも大切。

でも、何度も交流を経験する中で、「一緒につくる時間を楽しむこと」も同じくらい大切だと気づいたと言っていました。「仕上がらなかったら、一緒に編めばいいのよ」その言葉と笑顔が、とても印象に残っています。

見学を終えて

今回の視察を終えてホッとお茶を飲みつつスタッフから出てきた声は、「次はこうしてみたい」という前向きな内容でした。

「もっとシニアスタッフ自身が活動を紹介できたら」
「誰がどんなものをつくっているのか、分かるようにしたら」
「事前に相手の国や文化について知っておいたら」
「言葉だけに頼らず、折り紙や手芸を使って交流できたら」

海外から見学者を迎えることは、BABA labの活動を知ってもらうだけではなく、私たち自身が、普段やっていることを見つめ直す機会にもなっています。

「きちんと教える」から「一緒に楽しむ」へ。

「商品を紹介する」から「つくっている人を知ってもらう」へ。

回を重ねるたび、私たちの迎え方も少しずつ変わっています。

これからも、うまくいったことも「次はこうしたい」もみんなで持ち寄りながら、BABA labらしい交流のかたちを育てていきたいです。


レポート:横地真子(BABA lab)

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