【私たちの見聞録】シニアメイドの“喪え喪えキュン”と “かわいい”が合言葉 多世代が集う冥土喫茶しゃんぐりら
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BABA lab代表の桑原とライターの渚は、50代に突入した団塊ジュニア世代です。
まだまだ先と思っていた「シニア期」がぐっと近づきました。“◯歳から”いきなりシニアになるのではなく、気が付いたらシニア行きのトロッコに乗って、緩やかな坂を下り始めたような感覚もあります。
トロッコに乗り込んだ私たち、どうせ坂を下るのであれば、「みんなで愉快に転がりたい」とも思うのです。
愉快に生きるためのヒントを得るために、今どきのシニアに会いにでかけたり、シニアが集う場所に伺ったりする、そんなコーナーが始まりました。
聞きたいこと、知りたいことがたくさんあります!いざ出発
群馬県桐生市で月1回開催される「冥土喫茶しゃんぐりら」。その衝撃的なネーミングと、シニアのメイドが活躍するコンセプトには、最初誰もが驚きます。この唯一無二のカフェは、どのようにして生まれたのでしょうか。 冥土喫茶しゃんぐりらを運営するNPO法人キッズバレイ、冥土喫茶しゃんぐりら店長の横倉佑樹さんと、メイドのデコちゃんにお話を伺いました。
冥土喫茶しゃんぐりら店長の横倉佑樹さん(左)と、メイドのデコちゃん
リミッターを振り切って誕生した「冥土喫茶」
―――「冥土喫茶」、「喪え喪えキュン」という強烈なワードに、ライターは撃ち抜かれました。このコンセプトはどのようにして生まれたのでしょうか。
横倉佑樹さん(以下、横倉さん):このアイデアは、6年前に受講したコピーライター養成講座(以下、養成講座)の課題から生まれました。養成講座の中で「世の中にないサービスを考える」という課題があり、講師からは「正反対のものを結びつけてインパクトを出す」「振り幅が大きければ大きいほど、大きなインパクトが生まれる」というアドバイスがありました。そこで考えたのが、カフェで働く若い女性のメイドを、人生のベテランであるシニアがやってみたら面白いのでは? 「メイド=冥土」にしてはどうか? というアイデアが出てきて、冥土喫茶の企画書を作成しました。
―――「メイド」と「冥土(めいど)」! 振り切ったワードが出てきたことと、言葉のフィット感がすごいです。
横倉さん:当時は課題のアイデア段階だったので、リミッターをかけずに自由に考えました。養成講座を卒業後、広告の制作プロダクションに勤め、地元の桐生市に戻ってNPO法人キッズバレイ(以下、キッズバレイ)に縁あって入職しました。キッズバレイでは長年、子育て支援や学生の居場所づくりを行っていますが、高齢者の居場所づくりはこれからという段階でした。そこで、養成講座の課題だった冥土喫茶の企画をキッズバレイ代表の星野に伝えたところ、「まずはやってみよう」と背中を押してくれました。
―――冥土喫茶を面白がれる土壌があったんですね。実際にメイドさんを集めるのは大変ではなかったですか?
横倉さん:普通の求人を出しても怪しまれると思ったので、まずはキッズバレイで長く勤めているスタッフのデコちゃんとココちゃんに声をかけました。
デコちゃん(冥土喫茶のメイド):冥土喫茶の企画を聞いた時から「楽しそう! やってみたい」と私は思ったのですが、もう一人のメイドのココちゃんは「不謹慎じゃないかしら?」と戸惑いを見せていました。そこで、冥土喫茶のコンセプトの「メメント・モリ(死を想うことで、今を大切に生きられる)」の話をしたところ、ココちゃんは意味や背景を自分で調べて「それならメイドをやってみたい」と言ってくれました。 現在は、オーディションを経た方を含め8名のメイドが在籍しています。埼玉県から参加しているメイドもいます。
メイド同士でLINEグループを作り、お祭りの後に飲みに行ったり、暑気払い、忘年会などを開いて交流を深めています。
横倉さん:メイドの条件は「65歳以上のやる気のある女性」です。応募の問い合わせをいただいた際、65歳以下の方には「65歳になってから応募してください」と案内しています。「早く65歳になって応募したい」と言ってくれる方もいて、年齢を重ねることをポジティブに捉えるきっかけになっているのがうれしいですね。
三途リバーを渡れば、そこは冥土喫茶のめくるめく世界
―――月1回開催されている「冥土喫茶」のコンセプトの作り込みも徹底していますね。冥土喫茶の入り口に「三途リバー(三途の川)」があったり……。
横倉さん:入り口でメイドさんがお客様に「三途の川を渡ってあの世へ行きますが、よろしいですか?」と声がけして、入場いただいています。飲み物の水は「お清めのお水」、トイレは「極楽浄土」、弁当は「冥土弁当」と名付けて、冥土喫茶の世界に入り込んでもらえるよう工夫しています。 そして、メイドさんがお客様に料理を運んだ際には、料理に向かってお客様と一緒に手でハートの形を作り、「喪え 喪えキュン。おいしくなあれ」とおまじないをかけます。シニアの方も学生もお子さんも、みなさんメイドさんと一緒に喪え喪えキュンを楽しんでいます。
冥土喫茶の日は、シニアに役立つ講座も同時開催していて、葬儀具メーカーさんが用意した棺に入る納棺体験や、認知症予防の講座、エンディングノートの書き方などを行っています。メイドの衣装を着てメイド体験ができる「なりきり冥土体験」は、とても人気があります。
―――冥土弁当はシニア向けに監修を入れているそうですね。
横倉さん:冥土喫茶でシニア向けの食事を提供したいと思い、ぐんま未来大学(旧・桐生大学)の栄養学科の先生と学生に協力をいただいています(現在は先生が食事提供)。シニア向けに塩分控えめで栄養バランスの取れた「冥土弁当」は、とても人気があります。 一人暮らしのシニアの方には、メイドさんや他のお客様と話ができて、健康的な食事をとれる機会になっています。
冥土喫茶のプレオープンは2024年6月、正式オープンは2024年7月
冥土弁当は50食作成。毎回売切れ好評!
全国、海外から訪れるお客様、多世代が混ざり合う場に
―――どんな方が冥土喫茶にいらしているのでしょうか。
横倉さん:北海道から沖縄まで全国各地、3歳から90代までの幅広い年代の方に来ていただいています。メイドカフェのファンの方や、現役のメイドさんも来てくれました。 当初イメージしていた以上に冥土喫茶が広がっていった時期もありましたが、今はSNSを見た高校生や大学生、地元のシニアの方、常連さんがお友達を連れてきてくれることが増えています。台湾や韓国など海外メディアの視察もあり、アジア圏の少子高齢化は共通の課題で、高齢者の居場所づくりのヒントを求めていると聞きました。
デコちゃん:「デコちゃんの笑顔に会いに来たよ」と毎回おっしゃってくださる常連さんがいて、その方はいつも満面の笑みで冥土喫茶を楽しんでいます。 80代の常連さんは一人暮らしで、普段は玄関掃除の時くらいしか外に出ないそうですが、わざわざ電車に乗って冥土喫茶に来てくれます。 先日も、富山県から片道7時間かけて冥土喫茶を目指して来てくれた20代の方がいました。
横倉さん:冥土喫茶を開いて感じたのは、「シニアには○○を」といったテンプレ通りのコンテンツではなく、多世代が本気で楽しめるコンテンツが求められているということです。 これはギリギリかも?と思う企画も時にはありますが、主催する側が面白いと思える企画は、お互いに盛り上がります。
デコちゃん:メイドの私たちは、お客様からたくさん「かわいい」と言われます。この年齢になって、こんなに「かわいい」と言われるのは素直にうれしいですね。 私たちもお客様に「かわいいですね」「すてきですね」とお伝えしています。「かわいい」「すてき」をお互いに笑顔で伝え合える冥土喫茶は、いつも楽しくて、私たちメイドも元気をもらっています。
―――冥土喫茶の接客で気にかけていることなどはありますか
デコちゃん:一人でポツンと食事をされている方がいたときに、横倉さんから「あのお客様にお声がけして」と言われたことがありました。このことがメイドミーティングで議題に上がり、「お客様には必ずお声がけしよう」とメイド同士で共有しました。 お客様が冥土喫茶を満喫していただけるように、お味噌汁を提供した時は、温かいうちに召し上がってほしいので、話しかけるのは少し時間がたってからにしよう、忙しい時はつい小走りになりがちですが、メイドなのでおしとやかに歩こう(笑)など、メイドのみんなでアイデアを出し合っています。
お客様とどんな話をしたらよいか悩んで、横倉さんに相談をしたら。趣味ややりたいことなどのキーワードが書かれている「話題カード」を作ってくれました(デコちゃん)
冥土ディスコ、恋活イベント、外部出演……広がる活動
―――「冥土ディスコ」や「シニアの恋活イベント」が始まったと聞きました。
横倉さん:冥土喫茶で、BGMに合わせて踊り出した方がいたことにヒントを得て、冥土ディスコを始めました。DJが70年代・80年代のヒット曲を流し、メイドもお客様もみんなで踊りまくります。この日に合わせてシニアの方がおめかしをして、楽しそうに踊っている姿を見ると、とてもうれしくなります。 若き日におそらくダンスホールで踊っていたであろう80代の方が、軽やかなステップを踏んで踊る姿には感服します。
伴侶を亡くしたお客様の話から、シニアの恋活イベント「セカンドスプリング」を開催しました。カップルが誕生し、おふたりで冥土喫茶に報告に来てくださいました。シニアは婚活ではなく、恋活がいいようです。
メイドさんの外部イベント依頼もあり、大学の文化祭でコラボしたり、美容学校で行われているオレンジカフェ(認知症カフェ)にゲスト出演したりと、活動の幅も広がってきました。
多世代が混ざり合う「人生の祭り」を全国へ
―――これから冥土喫茶とメイドさんはどこへ向かうのでしょうか? 野望を教えてください。
横倉さん:冥土喫茶がある群馬県桐生市は、高齢化率が37.7%と全国平均の29.3%よりもかなり高く、「20年先の日本の姿」とも言われています。各地の自治体や社会福祉協議会から「地域で冥土喫茶をやりたい」というお話もあり、高齢化率の高い桐生市でシニアや多世代が楽しんでいる冥土喫茶の形を、全国に広めていきたいと考えています。全国各地に冥土喫茶ができたら……想像するだけでワクワクします。
―――最後に、ババラボで掲げているテーマ「一人で長生きするのはちょっと難しい」について、思われることなど教えてください。
横倉さん:以前は、親世代やシニアの方に対して「何かしてあげなきゃ」と、どこか上から目線の意識がありました。メイドさんたちと一緒に活動する中で、支援する側・される側という壁がなくなり、フラットな関係性を持つ“仲間”なんだと意識が変わりました。
フェデリコ・フェリーニ監督の映画『8 1/2』に「人生は祭りだ。共に生きよう」というセリフがあります。冥土喫茶のお客様やメイドさんと関わる中で、「いつかみんな死んでしまうのだから、生きている間はお祭りだ」と思うようになりました。冥土喫茶や冥土ディスコを通じて、共通のコンテンツがあれば世代を問わずに楽しめるという発見もありました。 お祭りのように、誰でもふらっと参加できて楽しめる場所がもっと社会にあれば、一人で長生きすることも楽しみに変わるのではないでしょうか。
写真提供:NPO法人キッズバレイ
ライター 渚いろは
取材を終えて
BABA lab 代表 桑原静
今回の取材で一番聞きたかったのは、「かわいい」と言われることについてです。BABA labの顔でもある祖母・絹子さん(97歳)が「かわいい」と言われるとき、場合によっては"子ども扱い・キャラクター扱い"を感じモヤモヤしていました。思い切って冥土さんに「どうなんですか?」と聞くと、「うれしいです!いっぱい言ってほしい!」と即答。そうか…かわいいという役割をもって真剣に働く彼女たちには、かわいいと声をかけるのが正解なんだ。絹子さんの本当の気持ちは、もう聞けません。認知症が進み、それを確かめるチャンスは失われてしまいました。でも、きっと看板娘としてうれしかったはずだと、そう思うことにしました。冥土さん、たくさん素敵な話を聞かせていただき、ありがとうございました。おいしいとかわいいは、過剰摂取大いにあり!です。
ライター 渚いろは
ネットで見つけた「冥土喫茶しゃんぐりら」。こ、これは何だ!!と衝撃を受けて取材を申し込みました。冥土喫茶や冥土ディスコという強めのワード × 高齢者の居場所事業。 真逆のものを組み合わせて、少しブラックな要素を含んだ面白さが生まれることに、私は大賛成です。取材後、アイドル CUTIE STREET の「かわいいだけじゃだめですか?」が脳内を駆け巡りました。この曲をかけて冥土ディスコで踊りたい。人生は祭りだ! を体験したい。 早く65歳になってメイドになりたいと本気で思いました。
冥土喫茶しゃんぐりら
冥土喫茶しゃんぐりら
https://www.instagram.com/meidokissa_shangri_la/?hl=ja
NPO法人キッズバレイ
https://kids-valley.org/index.html