【私たちの見聞録】利用者の得意や好きが大事にされる通所型デイサービス

 「ひかりサロン蓮田」・和が家のくらしとシゴトバデイ「うるひら」

  • BABA lab代表の桑原とライターの渚は、50代に突入した団塊ジュニア世代です。

    まだまだ先と思っていた「シニア期」がぐっと近づきました。“◯歳から”いきなりシニアになるのではなく、気が付いたらシニア行きのトロッコに乗って、緩やかな坂を下り始めたような感覚もあります。

    トロッコに乗り込んだ私たち、どうせ坂を下るのであれば、「みんなで愉快に転がりたい」とも思うのです。

    愉快に生きるためのヒントを得るために、今どきのシニアに会いにでかけたり、シニアが集う場所に伺ったりする、そんなコーナーが始まりました。

    聞きたいこと、知りたいことがたくさんあります!いざ出発

一人暮らしの高齢者が今までできていたことができにくくなってきた時、認知症の症状が見られるようになったと感じた時に、どんな介護サービスが受けられるかご存じですか?

その一つに通所型のデイサービスがあります。

高齢者が元気になる通所型デイサービスがあると聞き、埼玉県蓮田市にある「ひかりサロン蓮田」と和が家のくらしとシゴトバデイ「うるひら」を訪問しました。

買い物がリハビリになる!「ひかりサロン蓮田」

「ひかりサロン蓮田」(以下ひかりサロン)は、JR蓮田駅前にある東武ストア蓮田マイン店の2階にあります。白を基調にした外観からは、フロアにある一店舗であるようにも見えます。

ひかりサロンでは、要支援から介護2の認定を受けた、ある程度軽度な主に高齢者が、午前の部と午後の部に分かれて通っています。活動は、当日の参加者と介護スタッフが、季節にまつわる話やニュースを話し合い、個々の状態にあわせた体操やウォーキングなどをした後に「ショッピングリハビリ」を行います。

ショッピングリハビリでは、介護スタッフと店内の100円ショップや地下のスーパー、ショッピングセンターの近くにある八百屋さんなどに買物に行きます。高齢者が買い物がしやすい仕様の「楽々カート」もひかりサロンには用意されています。買い物が終わったら、その日の活動は終了。送迎車に荷物も載せて自宅に帰ります。

ひかりサロンでは、今よりもっと歩けるように、生活を楽しめるようにを目標にして積極的に外出活動もしています。

「楽々カート」高齢者の買い物がしやすいようにハンドルのところに腕や身体が乗せられるクッションがついている。実は、ひかりサロンに通う高齢者がどんどん元気になって、今使用しているのはおひとりだとか!

取材時にお会いした高齢者の皆さんは、よく笑い、介護スタッフともたくさんおしゃべりをして、杖なしで、すいすいと歩いている方もいました。

ひかりサロンに通う高齢者たちは、実は多くの人が「一人暮らし」で、「家に引きこもっていた人」でした。

「ひかりサロンに通う高齢者は、サポートを受けながら自宅での生活ができる方です。ひかりサロンに通い始めて、どんどん元気になられて、外出や旅行へと活動範囲が広がっていく方をたくさん見てきました。ひかりサロンを卒業した方もいます」と和が家カンパニーズ株式会社(以下、和が家グループ) 代表の直井誠さん(以下直井さん)。

和が家グループ代表の直井誠さん

「一人暮らしの高齢者は、人と会話をする、感情を表す場面がぐっと減ります。そうなると人はどんどん孤独になり、家にひきこもってしまいます。少し前まで身近にあったご近所さんとの井戸端会議や挨拶を交わすこと、町内会の集まりなどが、孤立・孤独を防ぐセーフティーネットだと強く感じています」(直井さん)

直井さんは、多くの介護施設が街から離れた場所にあり、普段の生活で認知症の方や高齢者と出会うことが少ない現状を変えたいと、ショッピングセンター内にデイサービスを設置して「介護の社会化」を目指しました。高齢者が社会に参加することを継続するためです。

ひかりサロンがショッピングセンターに出店した当初は、「なぜデイサービスがここにあるのか?」と、デイサービスに通う高齢者や介護スタッフたちに対して、冷ややかな眼差しを向けられることもありました。現在はショッピングセンター内に介護職員と利用者がいる光景は当たり前のこととなり、お客様とひかりサロンの利用者、スーパーの店員さんで挨拶や声掛けをする関係も生まれています。

多世代交流と地域ケアの場 和が家のくらしとシゴトバデイ「うるひら」

和が家のくらしとシゴトバデイ「うるひら」(以下うるひら)は、多世代と地域ケアの共生の場として、認知症の高齢者や若年層の障がい者、地元の子どもたちや大人が混ざり合って過ごせる場所です。うるひらの入口横には駄菓子屋が併設されていて、学校帰りの小学生や親子連れ、放課後等デイサービスの子どもたちが訪れています。

うるひらの入口の引き戸を開けて中に入ると、高い天井と木材をふんだんに使用した、ゆったりとした空間が広がり、広いキッチンが目に入ります。取材陣は、部屋の中央でくつろいでいた利用者さんたちから、あたたかい出迎えを受けました。

伺った時はランチ時間近くだったので、室内には揚げ物や煮物のあたたかい香りでいっぱい。ランチはうるひらに通う利用者さんたちが腕を振って作っています。

この日のランチは、から揚げ、天ぷら、切り干し大根の煮物、野菜たっぷりのお味噌汁。切り干し大根は畑でとれた大根を干したもの。味噌は毎年利用者さんと一緒に作る

駄菓子屋には近所の子どもや小中学生、放課後等デイサービスに通う子どもや、スタッフの子どもが集う 駄菓子屋の奥にある畳の部屋でくつろぐ子も多い

うるひらに通うほとんどの利用者は、認知症の診断を受け、介護度が1~4前後の方とお聞きしましたが、ライターがイメージしていた認知症の高齢者がいる光景とはかなりかけ離れていました。みなさんニコニコほがらかに介護スタッフとおしゃべりしたり、くつろいだり、ランチづくりをしていました。その様子は、高齢者と息子や娘世代が自宅などで過ごしている雰囲気と変わりません。介護スタッフも明るく元気な方ばかりです。

「うるひらでは、その人の得意や好きを活かした、普段と変わらない生活中心の時間を過ごすことを大切にしています。例えば、お客様が来た時にお茶やコーヒーを出したり、食事の配膳をするのは、本人が自発的に行っていることです。駄菓子屋さんの店番もやりたい人が集まってやっています。介護スタッフから利用者さんへの指示は極力なくして、本人がその時にやりたいことをそっとサポートする役割に徹しています」(直井さん)

前頭側頭型認知症の利用者さんがうるひらに来ることが決まった時は、介護スタッフたちで、この方の認知症の特徴である「同じ動作を続けることで行動が落ち着く」を活かした、うるひらで楽しく過ごせることは何かを話し合いました。

利用者さんと話す中で珈琲が好きなことが分かり、珈琲豆を挽くことをお願いしたところ、うるひらに来た日は毎回珈琲豆を挽いて、みんなに珈琲をふるまうようになりました。この方はうるひらでとても落ち着いて過ごしています。自動車の整備工場に勤めていた利用者さんは、車関係の作業が好きで、洗車を任せると車をピカピカに洗ってくれます。

大工仕事が好きな利用者さんは竹を割ったり、のこぎりで木の板を切って外のごみ箱を作ったりと、それぞれが好きなことや得意なことを行い、のびのびと過ごしています。

「うるひらの裏にある畑で野菜を作っているのですが、私たちは畑のことは全くの素人だったので、利用者さんにたくさん畑のことを教えてもらいました。利用者さんから教えてもらうことはとても多いですね」と直井さん。

「みんなで食べるとおいしいね」「今日のから揚げ、ちょっと甘くない?」ランチもみんなのおしゃべりがとまりません

本人の得意や好きを活かした活動を続けていくことで、認知症の進行がゆっくりとなった方も多いそうです。

元気になった人続出のひかりサロンと、まるで田舎のおばあちゃんの家に来たかのような居心地の良さを持つうるひらは、ライターの思うデイサービス、介護の場とは全く異なっていて、軽いショックを受けました。

この二つの場所ははどうやって生まれたのか?がもっと知りたくなりました。

次回は、「ひかりサロン蓮田」と和が家のくらしとシゴトバデイ「うるひら」を運営する和が家グループ代表の直井誠さんと介護スタッフの方のインタビューです。

お楽しみに。

ライター 渚いろは/カメラマン remi


「ひかりサロン蓮田」・和が家のくらしとシゴトバデイ「うるひら」を訪れて

BABA lab代表 桑原静
「うるひら」に入った瞬間、「ここに受け入れられている」という不思議な感覚を覚えました。利用者とスタッフが「介護される側、介護する側」ではないフラットな関係性がそこにはありました。自分で考えて、選択して、動く。そこで失敗しても出来なくても、そんな姿を「ありのまま」受容してくれる環境。利用者にとっても、働く人にとっても自然体でいられる、そんな場所があることに感動を覚えました。

ライター 渚いろは
ひかりサロンの階にはスポーツクラブ、高齢者層が多く通う運動スクール、100円ショップがあります。このフロアにそれぞれのお店のお客さんとひかりサロンの介護スタッフ、利用者さんが行き交っていましたが、ゆるやかな空気が流れて、全員が「ショッピングセンターに来ているお客さん」でした。介護の社会化には周囲の理解が不可欠で時間がかかることですが、この取り組みがもっと広がって欲しいです。


ひかりサロン蓮田

住所:埼玉県蓮田市東5-8-65 東武ストア蓮田マイン店2F
事業内容:地域密着型デイサービス/通所型サービス
※営業日、利用可能者、送迎エリアなど詳細は和が家グループ公式サイトを参照

和が家のくらしとシゴトバデイうるひら

住所:埼玉県蓮田市井沼988-1
事業内容:通常規模型デイサービス/通所型サービス
※営業日、利用可能者、送迎エリアなど詳細は和が家グループ公式サイトを参照

和が家カンパニーズ株式会社(通称:和が家グループ)

https://wagaya-group.jp/
Instagram:https://www.instagram.com/wagaya.life1/

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