【私たちの見聞録】超高齢社会をゲームで体感 地域課題を自分ごとにする力後編:超高齢社会体験ゲーム「コミュニティコーピング」を体験

前編:地域の困りごとが体感できるボードゲーム誕生秘話 はこちらから

大人3名+中学生1名の4名で、超高齢社会体験ゲーム「コミュニティコーピング」を体験しました。ファシリテーターは一般社団法人コレカラ・サポートの佐藤さんが担当しました。

  • BABA lab代表の桑原とライターの渚は、50代に突入した団塊ジュニア世代です。

    まだまだ先と思っていた「シニア期」がぐっと近づきました。“◯歳から”いきなりシニアになるのではなく、気が付いたらシニア行きのトロッコに乗って、緩やかな坂を下り始めたような感覚もあります。

    トロッコに乗り込んだ私たち、どうせ坂を下るのであれば、「みんなで愉快に転がりたい」とも思うのです。

    愉快に生きるためのヒントを得るために、今どきのシニアに会いにでかけたり、シニアが集う場所に伺ったりする、そんなコーナーが始まりました。

    聞きたいこと、知りたいことがたくさんあります!いざ出発

超高齢社会体験ゲーム「コミュニティコーピング」について

地域と地域資源をつなげて、悩みを抱えた人の社会的孤立を解消する協力型ゲームです。悩みを抱えた人が6つの地域のどこかで次々と登場します。プレイヤーは、悩みを抱えた住人に悩みを解決できる地域の人を紹介していきます。同じ地域に悩みを抱えたまま解決できない住人が4名以上、その年の最後にとどまると、地域体制の崩壊となってゲームオーバーとなります。ゲームは2021年からスタートし、2030年まで地域が存続できればゲームクリアです。

 

地域課題がカードで見える化 作戦会議の必然性

佐藤さんからゲームルールの説明を受けて、参加者はプレイヤーカードを引き、その属性でゲームに参加します。今回のプレイヤーは、「地元のそば屋」「カフェのマスター」「世話好きなおばちゃん」「個人経営の理髪店」でした。

地域に住む住人の悩みは「住まい・生活」「お金」「健康」「人間関係」の4種類。悩みのレベルは1から3まであり、3が一番重い悩みです。

その人たちの悩みを解決できる民生委員、ケアマネージャー、弁護士、カウンセラー、市民後見人などの役割を持つ人たちの「解決能力カード」にもレベル1から3まであり、解決できる悩みの分野がふられています。

プレイヤーは、自分の番の時に「COPNG (コーピング)=住人の悩みを聞き出す」「つながり=つながりカード(解決能力カード)を1枚増やす」「処方=住民の悩みを解決する」を選んで、住民カードの悩み解決を行います。

例えば、住民カードの表に「住民カード A地区 70代男性 一人暮らしなので、色々と不安が」と記載があります。プレイヤーが住人の具体的な悩みを聞き出すコーピングを行うと、カードを裏にめくることができます。カードの裏に住人の悩みのレベルと分類が書かれており、処方を選んで、悩みに対応できる解決能力カードを出して住人の悩みを解決します。

カードを裏返すためには、コーピングが必須です。そのため、コーピングができていないカードはその地区に残ります。

自分のターンが来るたびに、住民カードを1枚引き、該当地区に置きます。ゲームが進むにつれて、AからFまでの6地区に悩みが解決できていない住民カードがたまってきます。悩みが2分野に渡っていることや、悩みレベルが高いと解決に時間がかかります。参加者がどのカードを持っているか、次のターンでどんな動きをしたら地域住人が4名以上にならないか、作戦を練る時間も増えていきます。1年が終わると「イベントカード」を1枚めくります。イベントカードで時に天変地異が起こったり、トラブルが起こったりと、プレイヤーの動き方に制限が出てくることもあります。

今回のゲーム体験では、参加者同士で、自分がこのカードを出すと、どうなるかを予測したり、オールマイティーに近い解決能力カードを持っていた人が、どの住人の悩みに対応するといいかなどを、相談をしたりと、どんどん盛り上がっていきました。

興味深かったことは、コーピング(悩みを聞く)するだけで、住人の悩みが解決されたこと。つい、解決能力カードで解決しようと思っていた参加者には目からうろこの体験でした。

参加者の感想

「最初は人生ゲームみたいなのかなと思っていたけど、現実に起こりそうなことがでてきて、解決していくのは楽しかった」

「一人ではなかなか解決できないことも、誰かに相談したら解決していくのを実感できました。奥深いゲームで頭をたくさん使いました」

「最初つながりのカードをあまり持っていなかったけど、ゲームが進んでいくとつながりカードが増えて解決も進むのがリアルな感じでした」

「すぐには解決できない悩み(分野が2個など)にはつい、必死になりました。」

ゲームの住人が“ご近所の誰か”に見えてくる

―――ゲームを体験して、現実にある困りごとをたくさん感じることができました。

佐藤さん:振り返りの時に、「これ、うちのことだわ」とつぶやかれる方もいます。困りごとは、表に出せなかったり、どこに、誰に相談したらいいかわからなかったり、当事者自身が困りごととは思っていないこともあります。ゲームに出てきた住人たちが近所にいる可能性はとても高いです。自分なら何かできるか?は、あまり大きく考えずに、近所の方に挨拶してみようなど、できそうなことから始めてみることをおすすめします。今回のゲーム中にありましたが、「話を聞く」だけで解決することも実際にありますよね。

―――今後の展望について教えてください

佐藤さん:ゲーム体験で得られた気づきを地域で実際に活かせる「街のつながり図鑑」という取り組みを試験的に始めています。Googleマップに地域でつながりを持てる場所にピンを立てて一般公開し、自分の住む地域にどんなつながりの場があるか可視化します。東日本大震災が発生した日に、都心勤務の多くの方が徒歩で家に帰る事態が起きました。住まいから離れた場所に勤務している人も、家族が住む地域で頼れる人がいれば、勤務地で待機して安全を確保することもできるはずです。ゲームは防災との親和性も高いので、超高齢社会の防災対策研修などにも利用してほしいです。

―――最後に、「長生きしても悪くないと思える世の中」について思われることなど教えてください。

佐藤さん:長生きを前向きに感じる環境や仕組みは整いつつありますが、高齢者に適切な情報が届いているか、孤独・孤立の問題は課題です。

高齢者と地域とのつながりがある状態とは、一人ひとりの高齢者が地域と接点を持ち、自分が役立っている、求められている実感を持っていることではないでしょうか?地域とのつながり具合も、高齢者自身が選択できる自由もあってほしいです。人とのつながりを積極的に濃く持ちたい人もいれば、挨拶する人が数人いるゆるいつながりでよいと思う人もいます。いろいろな思いや考えを持った人が地域に暮らす中で、今よりも環境、仕組み、選択が成熟した社会になれば、きっと「長生きするのも悪くない」と思える景色が見えてくると思います。

ライター 渚いろは


インタビューを終えて

BABA lab代表 桑原静

超高齢社会にはなにが必要か?これはBABA labにとって、私とっても、一番重要な問いです。国の制度が充実しているだけではダメで、街に住む人たちの声がけや「なんとなくあの人が、あの家が気になる」という意識、そして、それを伝えられる知人がいるか?窓口や専門家を知っているか?さらにその様々な要素がうまく噛み合うことが必要なのだなとゲームを通して再認識しました。仕事では、"つながり"や"多世代"などのよくある地域キーワードを使いがちですが、言うは易し!まずは私もご近所を知ることから再出発したいです。

ライター 渚いろは

超高齢社会を実感しているかといえば、街にでると高齢の方が増えたなぐらいの感覚でいました。ゲームを体験して、超高齢社会は、高齢者だけの問題ではなく、高齢者を取り巻く家族や住人、地域への影響がただならぬことを知りました。

住人カードの表は何気ない一言だけが書かれています。コーピングをして話を聞いてみると、こんなに大変なことを抱えていたんだ!と驚きがたくさん。そう、それはきっと私の住む地域でも確実に起こっていることです。できる範囲で、ご近所挨拶と付き合いをゆるく続けていこうと改めて思いました。


一般社団法人コレカラ・サポート https://koresapo.net/

超高齢化社会体験ゲーム「コミュニティコーピング」 https://comcop.jp/

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